第12章 悦楽の反転
視界がぐにゃりと歪み、強烈な浮遊感に襲われる。
「……っ、これが……焦凍くんの身体……?」
の声は低く落ち着いた響きを持っていた。
右半身から伝わる凍てつくような冷気と、左半身から立ち上る爆発的な熱。
その極端な二面性が一つの肉体に同居している不思議な感覚に、は息を呑んだ。
試しに掌を広げてみると、右からは氷の華が咲き、左からは炎が揺らめく。
「すごい……。二つの個性が、こんなにハッキリ……」
自分の身体では決して味わえない、強大な力の奔流に驚嘆していたその時だった。
「…………柔らかいな」
目の前で自分の姿をした少女が、無表情のまま両手で自分の胸を揉みしだいていた。
「ちょ、……ちょっと待って、焦凍くん!! 何やってんの……ッ!?」
は慌てて自分の身体の手首を掴んで引き剥がした。
まだ中庭には、入れ替わりの個性を持つ男子生徒が残っている。
彼は目の前で繰り広げられた「美少女が自らの胸を揉む」という衝撃的な痴態に、顔を真っ赤にしながらも、瞬き一つせずその光景をガン見していた。
「……あ。すまない、無意識だった」
轟は自分の手のひらに残る柔らかい感触を確かめるように指を曲げ、それからようやく視線に気づいた。
「……あまりに、自分の身体と造りが違いすぎて……つい、確かめたくなったんだ」
淡々と謝罪する焦凍だったが、その頬は微かに上気している。
入れ替わりの少年は、二人の空気に耐えきれなくなったのか真っ赤な顔のまま脱兎のごとくその場を走り去っていった。
静まり返った中庭で、轟は自分の細い指先を見つめ、スカートの心もとなさを感じながら、ゆっくりと視線を上げた。
「……。……お前、いつもこんなに……無防備な格好で、俺たちの前にいたのか」
は焦凍の身体に宿る、逃れようのない熱の反応に戦慄していた。
(……っ、胸を揉む自分の姿を見ただけで、こんなに……っ)
ズボンの布地を押し上げる熱く、猛々しい質量。
轟の肉体は、の痴態を視覚に捉えただけで、容赦なく「雄」としての本能を剥き出しにしていた。
「……ッ、……焦凍くん、とにかく早く戻ろう……ッ!!」
低い声で急かし、二人は寮の自室へと駆け込んだ。