第12章 悦楽の反転
放課後の教室が、一気に沸騰したような喧騒に包まれた。
「……。少し、いいか」
教室の入り口に立っていたのは、雄英高校でも屈指の実力と端正な容姿を誇る、轟焦凍だった。
昨日、爆豪が彼女を連れ去った時以上のざわめきが、クラスメイトたちの間に広がる。
「えっ、轟くん!? なんで……」
「……話がある。お前を迎えに来た」
淡々とした、けれど有無を言わせない響き。
周囲からは「昨日は爆豪くんで、今日は轟くん!?」「修羅場かよ……」と、好奇の混じった囁き声が漏れ聞こえてくる。
は顔から火が出るほどの羞恥に耐えきれず、轟の背中を無理やり押すようにしてその場を逃げ出した。
「ちょ、轟くん! 目立ちすぎ……ッ!!」
人気のない中庭まで導かれようやく足を止めただったが、そこでさらに目を見開くことになった。
そこには、昨日ぶつかって個性を暴走させた、あの少年がポツンと立っていたのだ。
「えっ……? なんで、あなたが……」
呆然とするを他所に、轟は至って真面目な顔でとんでもないことを口にした。
「……。俺も、お前と入れ替わりたい」
「……は!? 何言って……っ」
「昨日、爆豪がお前になって……お前の身体が受けるモノを理解したと聞いた。……俺も、お前のことをもっと知りたい」
轟の瞳は真っ直ぐで淀みない。
冗談を言っているようには到底見えなかった。
「相澤先生には既に話を通してある。『がいいなら、許可する』と承諾は貰った。……準備は、もうできている」
轟の隣で、少年がおずおずと手を伸ばしている。
昨夜、爆豪の身体で味わったあの衝撃が、再び自分を襲おうとしていることに、の心臓が激しく脈打った。
「……轟くん、本気なの……?」
「ああ。……お前の目に、俺がどう映っているのか。……そして、お前の身体が、俺の熱をどう受け止めるのか。……それを、確かめさせてくれ」
轟の手が、そっとの肩に置かれる。
彼の熱心な瞳に押し切られ、は覚悟を決めて少年の手を取った。