第12章 悦楽の反転
爆豪が部屋を去り静まり返った室内。
が乱れたシーツを整え、着替えを終えた頃ドアを叩く音が響いた。
「……、少し、いいか」
低く落ち着いた声。
ドアを開けると、そこにはいつも通りの無表情ながらも、どこか探るような瞳をした轟が立っていた。
「焦凍くん……。どうしたの、朝早くに」
「ああ。昨日、相澤先生から連絡があってな。『今日は一日、爆豪に委ねる。他は手出しするな』と。……何があったのか詳細は聞かされていないんだが、お前の様子が気になってな」
は少し言い淀みながらも、昨日起きた「入れ替わり」の顛末をかいつまんで説明した。
個性のせいで中身が逆転してしまったこと。
そしてその混乱の中で、お互いの身体を通して「快感」や「疼き」を共有せざるを得なかったこと……。
流石に生々しい行為の内容までは伏せたが、轟はの紅潮した頬や、部屋に漂うわずかな爆豪の匂いを敏感に感じ取ったようだった。
「……入れ替わり、か」
轟は顎に手を当て、珍しく眉を寄せて考え込んだ。
「爆豪がお前になって、お前が爆豪に……。……自分が他人になるというのは、どんな感覚なんだ」
「……うーん、不思議な体験はしたなーと思うよ?……男の人の身体になってみて、色々わかった事も多かったかな……」
「……そうか……爆豪も……お前の痛覚や快楽を直接『理解』したというのは、相当な経験になったんだろうな」
轟の瞳の奥に、微かな熱が灯る。
「……俺も、少し興味がある。お前のその『呪い』や、他人の身体で快感を感じるという感覚に」
轟の言葉に、はドクリと心臓が跳ねるのを感じた。
爆豪との濃密な夜が終わったばかりだというのに、また新たな「嵐」の予感に、背筋が微かに震えた。