第12章 悦楽の反転
「……はぁ!? なんで俺が目の前にいんだよッ!!」
目の前のが叫ぶ。
それと同時に、は自分の視点がいつもよりずっと高くなり、身体が筋肉質で逞しくなっていることに気づいた。
「……私……今、勝己くん、なの……っ?」
低く、掠れた少年の声。
自分の口から出た爆豪の声に、は戦慄した。
「す、すみません!! 今の、僕の個性で……っ!!」
ぶつかった生徒が顔を真っ青にして謝り倒してくる。
どうやらぶつかった事により「相手と中身を入れ替える」という、とんでもなく厄介な個性が暴発してしまったらしい。
爆豪の姿をしたと、の姿をした爆豪。
廊下にいた他の生徒たちが呆然と見守る中、中身が入れ替わった二人は、かつてないパニックに陥ることとなった。
「……おい、コラ!! ざけんなッ、さっさと元に戻しやがれ!!」
の姿をした爆豪が、ぶつかってきた生徒の胸ぐらを掴んで激しく揺さぶる。
その口調はいつもの粗暴な爆豪そのものだが、発せられる声は可愛らしい少女のもの。
そのギャップに、周囲の生徒たちは引き攣った顔で後退りした。
「ひ、ひぃぃっ! す、すみません! でも、僕の個性は……『一定時間が経過する』以外に解除条件がなくて……っ」
「あぁん!? んなふざけた仕様があるかッ!! 今すぐ解かねぇとブッ殺すぞ!!」
「勝己くん、落ち着いて……っ! 私の体でそんな怖い顔しないで……!」
爆豪の体に入ってしまったが必死に宥める。
自分の体から発せられる怒号と、掴まれて泣きべそをかく生徒。
あまりにも混沌とした状況に、廊下はパニック寸前だった。
そこへ騒ぎを聞きつけた相澤が、気怠げに現れた。
「……何をしている。廊下で騒ぐな」
その場を見た相澤は一目で異常を察知した。
鋭い眼光が、少女の姿で荒れ狂う爆豪と、少年の姿でオロオロとするを射抜く。