第17章 いい子 ※
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「ん……ちゅっ、…んぅ、」
静寂の中。
唾液が絡まる水音と、唇の隙間からこぼれ落ちるナマエの甘い声音だけが、鮮明に俺の鼓膜を揺らす。
「……ナマエ。隣の部屋に真希さんが居る」
「えっ……、」
「……から、声は我慢しろ」
重なっていた唇を解放して告げると、ナマエはハッとしたように口元を両手で覆い、潤んだ瞳を大きく瞬かせた。
真希さんも俺と同じく、特級呪霊に木の根を植え付けられた被害者だ。
元々体内に留まった呪力が少ないせいか、家入さんの治療後にはピンピンしていた気もするが…………まあ、"もしかしたら"、まだ隣の部屋で療養中かもしれない。
「……っ、がんばるね」
何度も小さく、必死に頷きながら、ナマエは俺の膝の上で小さな拳を握りしめた。
その様子がなんとも健気で微笑ましく、ふっと表情を緩めて頭を撫でてやると、ナマエは心地よさそうに瞳を細める。
(………流石に此処だと、最後まではしてやれねぇな)
俺の部屋なら、最中にどれほどシーツにシミが出来ようが、事後にランドリーへ放り込めばそれで済む。
しかし、ここは療養室。
清潔を求められる場で、そういう行為をすれば、あとあと後ろめたくもなるだろう。
それに避妊具もなければ壁も薄い。
通りすがりの誰かが廊下を通った時、ナマエの嬌声を聞かれたりでもしたら厄介だ。
「……きょうは、恵くんが考えごとしてる」
「…してねぇ」
「嘘ばっかり」
間髪入れずに否定したものの、女の勘とやらには敵わず、すべてお見通しらしい。
「……ねえ、すき」
「……ん、」
「…………恵くんは?」
両手で優しく頬を包まれ、持ち上げられて、物理的な逃げ場を塞がれる。
赤く潤んだ瞳と視線が絡まり、ナマエの心情が伝染したように、酷く心臓が締め付けられた。
「………す、きだ」
いたたまれなくなって目線を逸らし、言葉を吐き出す。
するとナマエはくすりと笑って「カタコトだ」と俺を揶揄った。