第16章 運命的な再開
「……虎杖」
パンダ先輩の生暖かい視線から逃げるように、軽く腕を伸ばしながら虎杖に声をかける。
すると虎杖は小さく首を傾げながら「ん?」と俺に振り返り、陽気に口角を上げた。
「大丈夫か」
「おーっ、なんか大役っぽいけど、なんとかなんべ」
「そうじゃねぇ」
肩を回しながらそう言った虎杖は、"ナマエの代役として大丈夫なのか"という心配をしていると思っているらしい。
だが、俺が気にかかったのはそこではない。
「何かあったろ」
「あ?なんもねーよ」
「…………」
直接的に問い詰めると、虎杖は一瞬だけ苦い表情をして視線を逸らした。
そんな顔で「何もない」と言われて納得して引き下がるほど、俺は察しが悪くない。
逃がさない、と言わんばかりに虎杖の横顔を見つめていると、ついに降参したように虎杖が本音を零した。
「………あった。けど、大丈夫なのは本当だよ。……むしろそのおかげで、誰にも負けたくねーんだわ」
本人が大丈夫だと言うのなら、俺が事情を深く聞く必要はないだろう。
「……ならいい。……俺も、割と負けたくない」
切りを付けて虎杖を横切れば、俺の発言を聞いていたらしい釘崎がすぐに噛み付いてきた。
「何が"割と"よ。一度ぶっ転がされてんのよ!?圧勝!!コテンパンにしてやるわよ!!」
「………うん。東堂さん、私まだ許してない」
空に向かって拳を突き上げる釘崎。
そしてその隣では、また口を尖らせたナマエが制服の末広がった長い裾を肘まで捲り、腕に巻き付けた赤い布を縛りなおしていた。
「その意気よ、ナマエ!!真希さんのためにも!」
「うん!!真希さんのために!!」
「……そーいうのやめろ」
「明太子!!」
「そう!真希のためにもな!」
「だから、そーいうのやめろって言ってんだろ!」
それぞれが軽口を吐きながら、スタート地点の門前へ一列に並ぶ。
「へへっ、そんじゃ───勝つぞ!!」
そこへ最後に加わりは威勢よく声を上げた虎杖だったが、次の瞬間には背後から「何仕切ってんだよ」と真希さんに容赦ない蹴りを見舞われ、膝をついていた。