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【呪術廻戦】呪いの嫁入

第11章 それぞれの役割


「だ……大丈夫、です」


失礼にならないよう、震える手で乱れた髪を整えながら顔を上げると、男性は差し出していた手をゆっくりと引き、「そっか」と短く頷いた。


(早く皆と会いたいな……)


早く恵くんたちと合流して、新しい同級生を迎えたい。

───優しい人だといいな。

そう願いながら、逃げるように視線を空へ逃がした、その瞬間。


「ね、近くに俺の事務所があるんだけど……もしよかったら寄っていかない? 」


不意に、男性の顔が視界を遮るように割り込んできて、喉の奥がヒュッと引きつった。



「怖かっただろうし、温かいお茶でも淹れるよ」
「えっ……」



穏やかな笑顔。淀みのない善意の言葉。

この人は私を救ってくれた恩人だ。

そう自分に言い聞かせているのに、肌を粟立たせる嫌な予感が止まらない。



「せっかく助けたんだしさ、少しくらい付き合ってくれてもいいでしょ?」



そう言われてしまえば、何も言い返すことができなくなった。


私はこの人にお礼をしなきゃいけない。

だから────断っちゃいけない。


思考が恐怖と義務感で塗りつぶされそうになった、その時。



「ストーーーップ!!」

「!?」



鼓膜を震わせるほどの快活な声と、勢いよく割って入る桜色の髪。

飛び込んできたのは、虎杖くんだった。


「ミョウジ!この人知り合い?」
「あ…いや、あの……さっき、助けてもらって、」
「そっか」


虎杖くんは短く応じると、迷うことなく私の前へと割って入り、その大きな背中で男性の視線を遮ってくれた。


「助けてくれたのは感謝するけどさ、その見返りに嫌がることすんのはダメでしょ」
「いっ、いやぁ…別に俺は……」


虎杖くんの芯の通った低い声に、男性の顔が目に見えて引き攣っていく。

図星だったのか、男性が苦しい弁明を口にしようとした時。


「虎杖、急に走ってどうし──……」


雑踏を割って届いたのは、何よりも聞き馴染んだ大好きな声。


「………は?」


その低すぎる声音に場の空気が重く沈み、鋭利な眼光が男性の顔を真っ向から貫いた。
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