第10章 生きている証※
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俺の下でぐったりと四肢を投げ出し、肺の動きが目に見えるほど荒い呼吸を繰り返すナマエ。
既に意識が微睡の境界にあるのか、何度か名前を呼びかけても返事はない。
「っ………はぁ、」
くちゅ、と淫らな音を立てながら、ナマエの中から自分のモノを引き抜いた。
薄い膜を付けるのも、外して口を結ぶのも手際よくできるようになるほど、俺はナマエを抱いてきた。
アイツの身体を浄化する。
その解呪のためと言えば聞こえは良いが、結局のところ、俺はいつもナマエに煽られ、絆され、流されているだけ。
今日だってそうだ。
ナマエの悲しげな表情が近づいてきたとき、唇が重なるのを阻止しようとしていたはずの右手が、目的を失ってシーツへと落ちた。
俺は、アイツのあの顔に、救いようがないほど弱いらしい。
ナマエには、世界で一番、幸せになってほしい。
そんな傲慢なエゴが、いつだって俺の理性を容易く踏み荒らしていく。
「………アホ面」
着替えながら思考を巡らせている間に、ナマエは少しだけ口を開いて、規則正しい寝息を立て始めていた。
それをふっと鼻で笑ったあと、
棚からウェットティッシュを取り出し、その肌に残った情事の痕跡を丁寧に拭い去る。
そして予備のスウェットを引っ張り出し、起こさないよう注意を払いながら、ナマエの柔らかな身体に布地を滑らせた。
そんな事後のルーティンをようやく終えると、乾ききった喉がひどく水分を求めていることに気づく。
(………喉乾いた、)
もう一度だけナマエの乱れた髪を整えるように撫でてから、俺はベッドを離れた。
室内の小さな冷蔵庫から残り少ないペットボトルを取り出し、一気に飲み干す。
(……あいつの分、買いに行くか)
目が覚めたとき、一番に水を欲しがるのは分かっている。
談話室の自販機までなら、一瞬で戻れるはずだ。
そう思考を切り替えてドアを開けた、その瞬間。
「…げ」
隣の部屋の扉が同時に開き、中から五条先生と虎杖が、間の抜けた顔で姿を現した。