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【FF7】ボクシング・デー

第4章 振りほどくことができなかった日


「よくある話ね」

知人の話--本人の事として話すには気恥ずかしく、そう前置きして語った。多少の嘘を織り交ぜた話を最後まで聞いた上で、相談相手は紅く色づいた爪先を弄りながら、短く結論づけた。

よくある話--なのだろうか。
少なくともアグレイスにとっては初めてのことだった。
ぽってりとした唇をグラスにつける。緩く傾けた後に何事もなかったかのように続けた。

「そんなことより、今度のパーティなんだけどさ……」

アグレイスの初めての重大な相談は、そんなことにまとめられて終わった。
新羅カンパニーの受付という華やかな職に就く彼女には、そういったことは日常茶飯事なのかもしれない。ならば助言の一つでもと願ったが、もうその話題に戻ることはなかった。
心の内で小さく落胆した。それでもを顔には出さず、アグレイスは友人の話に耳を傾ける。

彼女の言うパーティは、会社の創立を祝う、その年で一番華やかな催しだ。

普段は社長を始めとした”お偉いさん”や事業の継続に尽力する出資者--アグレイスたちにとっては雲の上存在だけが顔を揃える場だ。だが、創立を祝う催しだけは別だ。一般社員はもちろん、期間が定められた労働者にまで門戸が開かれる。

その分、警備は厳重を極める。
残念ながら、一部の社員--アグレイスたちタークスや下々の一般兵にとっては、ただ神経をすり減らすだけの労働イベントと化していた。

友人は伏し目がちに、ひとつ溜息を吐いた。
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