第79章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)
少し上り坂になっている林道を走る。一般人である私が、ダリや九条の脚力についていかれるわけもなく、あっという間に距離を開けられてしまう。しかし、道は直線だ。道の端では木々が開け、広場になっている様子が垣間見える。オレンジの夕日がチラチラと見えるあの場所・・・あそこに敵がいる。
ダリが一番に飛び込む。手にはすでに彼の最強の武器である古槍が握られていた。次いで九条が広場に躍り込む。彼の手にもまた、いつの間にやら青色の丸石が先端についた20センチくらいの短い棒が握られていた。
「ダリさんは神宝使いを!私は・・・彼女を助けます!」
九条が右に走り、ダリが左手に走る。彼らが広くなったスペースの中央近くまで駆け寄ったあたりで、やっと私はその入口に到着した。右手に走った九条が10歳くらいの少女に、ダリが浅黒い肌をした大男とひょろっと痩せた白ワイシャツの男に迫っているところだった。
おそらくダリの前にいる二人、あれが神宝使いなのだろう。
彼らは突然現れた私達に目を見開いて驚いているようだった。慌てて立ち上がり、体勢を整えようとしているが、完全に後手に回っている。
ダリが先手必勝とばかりに、その古槍で二人の胴を横薙ぎにする。九条が手を伸ばし、麻衣の手を取ろうとする。
私達の急襲は成功した、はずだったのだが・・・。
「っ!?」
「しまった!傀儡(くぐつ)か!!」
ダリが横薙ぎにした二人はそのままチリのようになって空間に溶けていく。また、九条が掴んだ手は絵の具で描いた絵が水に滲むかのようにブレて薄れて、これもまた中空に消えた。
目の前で起きていることが一瞬、理解できなかったのか、ダリと九条の判断と行動が遅れてしまう。このとき丁度、広場の向こう側から、少し遅れた御九里と日暮が姿を見せる。
更に遅れて広場に到着した私は、少し離れてこの光景をみることになる。全体を俯瞰的に見られたのが幸いしたのか、視界の上の端にいる『何か』に私が一番早く気付くことになった。『何か』と言ったのは、それがまるで空間がそこだけ滲んだような『空間の違和感』としかいいようのないものだったからだ。
あれは確か・・・。
いつだったか土御門が言っていた『高等な隠形術は直接視認すら妨げる』というやつでは?!