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天狐あやかし秘譚

第72章 死生有命(しせいゆうめい)


女は走った。

ガサガサガサ
たたったたた・・・

後ろから確実についてくるアレの気配を振り払うかのように。距離は大分詰まってきているようだった。まずい、まずい、まずい!

ふっと背中に風のようなものを感じる。
何?と思い、振り向くとそこには・・・、

大きく黒い翼のようなものを広げ、目に当たるところから赤い涙のようなものを流しているアレが・・・。

「ひぃいいいい!」

恐怖のあまり、距離を引き離そうと大きく地面を蹴った。道路はすぐそこだった。とにかくあそこに出なければ、その思いが先走りすぎてしまった。
目の前に両腕をかざして顔を守りながら、自分と道を隔てる藪を一息に飛び越えた。

越えた!

道に出た。懐かしいアスファルトの感触。
たすか・・・

その瞬間、女の顔をヘッドライトが強く照らす。
ブレーキ音、焦げ付くような匂い・・・
ゴン、という鈍い音。

何が起こったかわからない。身体が燃えるように熱くなり、全く動かなくなった。
誰かが遠くで何かを言っている。

伝えなきゃ・・・伝えなきゃ・・・
助けて・・・・助けて・・・

「・・・だした・・・ばけ・・・にげ・・・」

そこで、女の意識は途切れてしまった。
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