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天狐あやかし秘譚

第93章 怪力乱神(かいりきらんしん)


雷獣の属性は「木気」、歳刑鞭の使う「水気」とは相生関係にある。つまり、水の術はただでさえ雷獣の攻撃を妨げるのに効果が薄いのだ。そんなことを言わなくても、雷に水だ。相性が悪いのは目に見えている。

雷獣が牙を向き爪を光らせ襲いかかってくる。その爪に、パチリと紫電が弾けていた。あの牙や爪が身体まで届いたら、多分ただでは済まない。

「ぐっ!」
金鞭を引き、鞭を手元に戻そうとするが・・・

ーダメだ!間に合わない!

奇妙な吠え声をあげた雷獣の牙が九条の喉元に迫ろうとした時、それを横からかすめる影があった。

影は九条の左方、3メートルほどの地点で着地すると、ポイと口に咥えた雷獣を吐き出すように投げ捨てる。喉笛を噛み切られた雷獣はそのまま闇の中に霧消した。

ー白狼・・・

影の正体は、左前の式神『神白狼』だった。大型犬ほどの大きさの凛とした姿勢で立つ白毛の狼は攻撃力と美しさを兼ね備えた左前らしい式神だった。どうやら、隙を見て勧請が出来ていたらしい。

「ありがとうございます!」
左前の方を見ずに、礼を言う。神白狼は素早く駆け回り、鎌鼬や雷獣を次々と倒していく。それだけでも九条の負担は大分減った。

とは言え、状況が悪いのは間違いない。
九条自身も式神を呼ぶことはできるだろうが、彼の式神『白鷺姫』は主として探査や防御に特化しているため、今、呼び出したとしてもあまり効果的ではないと思われる。

ージリ貧なのは変わらない・・・か!

しかし、その時、九条の背後で声が上がった。
「整ったのです!」

声の主は土門だった。緊急事態だと言うのに、妙に明るい声である。
「なんじゃあ!土門さん、作戦できたのか!?」
「はい!整いましたよぉ!
 九条さんは反閇(へんばい)を!左前さんと私を囲んでください!
 左前さん!水の檻で麒麟を囲んで!」
「んなこと言ったって!麒麟は土気だ!水の檻なんぞ大して効果は!」
「いいのです!私を信じるのですっ!!」

なんだかよくわからないが、土門の探知力は確かに陰陽寮随一だ。その土門が言うのだから、と二人はそれぞれ指示に従った。
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