第93章 怪力乱神(かいりきらんしん)
そして、3つ目が先程九条が推理した大物の復活制限である。
『鵺』のように名の知れた幻獣は通常「世界に一頭」しかいない。それが倒されると、世界の理の中にその幻獣の情報が再び立ち現れるまで時間が必要となるのだ。これは幻獣の種類によってまちまちである。例えば鵺は2日くらいで復活したが、サトリはいまだ復活していなかった。
ーだとしたらあの麒麟も、一回何らかの方法で消滅させれば・・・
とはいえ、攻撃が全く通らない。左前も自分も『小物』たちの処理で手一杯だ。そしてここで手を抜けば、すぐさま幻獣たちが他の陰陽師を襲いに行ってしまうので麒麟攻略に力を注ぐことすらできないのだ。
ーせめて、土門さんが機能すれば!!
そう思って、ちょうど自分と左前の真ん中にいる土門の様子をちらりと伺う。土門は先ほどから、麒麟を熱い視線で見つめてブツブツと何事か呟いている。
土門は珍しい術式や現象、幻獣の類に目がない。そのマニアぶりは陰陽寮中に知れ渡っている。
ーそれにしても、今、そうならなくても!!
目をキラキラさせながら麒麟の様子を舐めるように見ている土門に対して、位階が上とは言え、苛立ちを隠せない。左前も『今やってる』と言っていたが、一体何をやってるのか・・・と、こちらに対しても腹が立っていた。
ビシ!と目の前に迫る猫又を『歳刑鞭』で打ち据える。ギャン!と一声鳴くと尾が二つに別れた異形の猫は空気に溶けるように消滅した。しかし、消滅したそばからまた、新しく鎌鼬と雷獣、大柄な狼のような妖怪、『山伏狼』が襲いかかる。
「切りが無い!」
水の鞭を振りかざし、九条が再び眼前に襲いかかる敵を打ち払おうとした時、ドゴン、という大音響とともに、地面が大きく揺れた。
「な!?」
その揺れでバランスを崩し、鞭の狙いがそれてしまう。鎌鼬と山伏狼の鼻先をかすめることには成功したが、雷獣は鞭の間をすり抜けてこちらに迫ってきてしまう。
ーしまった!雷獣が!
九条の歳刑鞭は、その元となる金鞭の先につけられた宝玉の呪力により生み出されており、宝玉は鞭を作ると同時に身体を薄く守る結界も張る。なので、少し位のダメージは霧散させることができるのだが、今回は相手が悪い。雷獣だ。