悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第7章 対象キャラ全員の心を掌握したい
それは、彼自身の“感情”だった。
魔術合同大会の演習が終わった後、
ヴァイオレットはレオンの炎の腕に支えられたまま、笑っていた。
──そのやりとりを、ノエル・アルベリッヒは黙って見ていた。
手には、魔力波動の記録用の水晶板。
だが、視線はそこにはなかった。
「……君の魔力波動、以前より安定している。
特に、闇の収束率が顕著に向上している」
独り言のようにいつもの癖で記録を読み上げるノエルの水晶版を横から覗き込む脳にしてヴァイオレットが、彼のすぐ横に立っていた。
「まぁ……それは、あなたの雷が支えてくれたおかげですわ」
「……そうか。なら、次回の観察では“単独干渉”ではなく、
“混合属性下での反応”も記録してみよう」
「混合属性……?」
「君が、誰と組んだときに最も魔力が安定するか。
……それを、検証する価値がある」
ノエルの声は、いつも通り静かだった。
だが、その瞳の奥に、わずかな“苛立ち”が見えた。
「……ただし、条件がある」
「条件?」
「次の演習では、レオン・クロードとは組まないこと。
彼の魔力は、君の波動に過剰な刺激を与える。
……観察に支障が出る」
(え、え、え!?それって、嫉妬!?)
「……それは、研究上の判断ですか?」
「……ああ。もちろん、そうだ」
ノエルは目を逸らさずに言った。