第4章 深すぎず浅すぎず、近すぎす遠すぎず
「六年三組、袴田」
名前を呼ばれた瞬間、
ジーニストは背筋を伸ばした。
(……あの日、小さな手で震えていた子が……
こんな風に歩いている)
壇上に向かうの背中は、
もう“孤独だった子ども”ではなかった。
証書を受け取り、
は一礼する。
その動作には、
ヒーローのような気品と落ち着きがある。
ジーニストは胸が熱くなった。
⸻
卒業式の後、
袴田家にはある人がこっそり現れる。
赤い羽根の青年――ホークス。
「よっ、。卒業おめでとう。」
の顔がぱっと明るくなる。
「ホークス!来てくれたの!?」
「もちろん。大事な妹みたいなもんですから。」
ジーニストが苦笑する。
「口だけは相変わらず軽いな。」
ホークスは肩をすくめた。
「いやいや、ジーニストさん。今日は真面目ですよ。
……ほんとに、綺麗になったなっ。」
は頬を赤らめる。
(……急にそんな……)
ホークスは慌てて手を振った。
「あっ、ちがっ……!そういう意味じゃなくて!
えっと、その……成長って意味で……!」
ジーニストはため息をつきながらも微笑む。
「落ち着きたまえ。
は君の言葉を真面目に受け取るんだからな。」
ホークスは照れ隠しに羽根をばさばさ揺らした。
(……やっぱ、成長したな。
もう、俺が“子ども扱い”していい年でもなくなってきたか……)
ほんの少し胸が痛くなる。