第4章 深すぎず浅すぎず、近すぎす遠すぎず
夕食後、ジーニストは静かに湯呑みを置いた。
「最近、は落ち着いているな。
学校の話をするときの表情が柔らかい。」
ホークスが頷く。
「友達もできたらしい。
ミナって子、仲良くしてるみたいだぞ。」
ジーニストの目元が少しほころぶ。
「それは良いことですね。
安心した……」
その言葉のあと、彼は一度まぶたを閉じる。
(あの日、絶望の中で震えていた小さな子が……
今では、笑って“ただいま”と言ってくれる)
その変化は、ジーニストの心を温かくした。
⸻
しかしその夜――
ホークスはの部屋に入った時、ある違和感に気づく。
机の引き出しの奥、
くしゃくしゃになったメモ。
『ってかわいいからって調子乗るな』
『男子に優しくしないで』
『つまんない』
そして、ビリビリに破かれた折り紙。
ホークスの心臓が跳ねた。
「……これは……」
胸が一瞬で冷たくなる。
(誰だ……にこんな……)
静かに部屋を出ると、
すぐジーニストの元へ向かった。
「ジーニストさん……いいですか、これ見て欲しいんですけど」
破れたメモを渡すと、
ジーニストの瞳が鋭く細くなった。
「これは……どういうことだ?」
ホークスは声を押し殺す。
「……言ってなかっただけで、
いじめられてたのかもしれない。」
空気が凍りつく。
ジーニストは深く息を吸い、
低い声で言った。
「……明日、話を聞こう。
何があったにせよ、これ以上一人で抱えさせるわけにはいかない。」