第3章 はじめましての訓練
ほんの少し温かい体温。
羽がふわりと背中にかかり、まるで毛布みたいに包んでくれる。
「今日は…眠るまでそばにいるよ。
大丈夫、大丈夫だよ」
その語りかけは、子どもをあやすように優しいのに、
どこか同じ痛みを知る人間の声だった。
はその胸元に顔を埋め、
静かに泣き疲れて眠りに落ちる。
ホークスは眠ったの背を優しく撫でながら、
小さく呟いた。
「……いつか、この子の夜が怖くなくなるといいな」
そして朝日が昇るまで、ずっと離れなかった。
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夜泣きはその後もしばらく続いた。
ホークスは毎回、必ず駆けつけた。
眠そうな顔の時もあれば、慌てて羽を散らしたままの時もあった。
「泣き声きこえたら、オレの仕事。
ちゃんの泣き虫担当だもんね」
「……ちがう……」
「ん?」
「……泣き虫、なおす……」
「なおせなくていいよ」
そう言って、の頭を撫でた。
彼はの記憶を無理に聞き出さなかった。
語りたいときにだけ、は話した。
泣いてしまうときは抱きしめ、
眠れない夜は本を読み、
怖い夢を見たら手を握る。
それが、ホークスが彼女にした“保護”だった。
公安の人々は、ホークスの行動を止めることはなかった。
彼が一番に寄り添えていると分かっていたから。
そして――
少しずつ、の夜泣きは減っていった。