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たまのケージ【ヒロアカ】

第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)




『緑谷先生』


声を聞いたら、顔を見たら。


だめだと分かっているけど欲しくなってしまう。



きみの、全てを。




ある日の、雄英高校。


「デク先生、さよーならー」
「じゃあねー先生!」
放課後、生徒達が無邪気に僕に『また明日』の挨拶をする。
「気を付けて帰ってね」
僕は、いつものようにそんな彼らに相槌を打つ。

「……ふぅ……」

今日も、『教師 緑谷出久』としての1日が終わろうとしている。

軽く息を吐いて廊下の窓から見える景色を眺めながら歩いていると、ちょっとあり得ない光景が目に入ってしまった。

「……んん……?」

校内では1番高いと思われる木の上の方の枝に、誰かが座っていたんだ。

 あんな所に登って……危ないなぁ、注意しないと……

僕は、早歩きでその木がよく見える空き教室まで行くと窓を開けようと引き手に手をかけた。

よく見えるようになった所で、誰が木に登った犯人なのか分かってしまう。

 こ、この子は……

「だめだよ、こんな所に登っちゃ」

窓を開けて注意するけれど、その子はどこ吹く風だ。

木の枝に座ったまま、ぼんやりと景色を眺めているのか、なんなのか。

とにかく、微動だにしなかった。

「……甘井さん、聞いてる?」

彼女の名前を呼ぶ声が、少し震えた気がした。


甘井繭莉。
ヒーロー科1年A組。


僕は、彼女の事が好きだった。


それは、教師的にとてもまずい事だとは思ったけどこの想いを誰かに口外しなければいいだけの事なので心の中にそっと仕舞っていた。

「甘井さ……」
「聞こえてますよ?緑谷先生」
ようやく僕の声に反応した甘井さんがこちらを見て微笑む。

その、歳の割に少し大人びた笑顔。

僕の心臓は、トクトクと少し速くなった。

「落ちたら危ないよ?降りないと」

 っていうか、どうやって登ったんだろう?

 猫みたいだなぁ。

「はぁい。……よっと」
甘井さんは、本当に猫みたいに枝から窓の桟にひょいっと足をかけると僕の肩に両手を置いて床に着地した。

不意打ちで触れられて、少し早かったはずの心臓は早鐘を打った。

 顔、赤くなってないといいけど……!

「どうしてこんな高い木に登っちゃったの?」
動揺した心を落ち着けようとしながら、聞いてみる。
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