第9章 事情聴取(相澤消太)
すぐに熱い舌が入ってきて、身体の芯がじわっと熱くなる。
私もそうした方がいいのかと思って、それに自分の舌を絡めると唾液ごとじゅっと吸われて腰がビクっと反応してしまった。
なんだか……あったかくて、ずっとしてたい。
……私……こんなキス、知らない……
「……ふぁ……」
唇が離れると、どちらのとも言えない唾液がつっと糸を引いた。
「甘井さん」
「……はい……?」
どうしよう。
キスが気持ち良かったから、上手く喋れない……
「さっき、言うなって言ってましたけど……俺と付き合って下さい、試しに」
なんで、言っちゃうかな……
そんなの、答えなんて……
ひとつしか、ない。
「……はい……」
キスの所為でうまく回らなくなった頭でそう答えると、相澤さんは私から身体を離してまた腕を掴んだ。
そして、そのまま歩き出す。
「あ、相澤さん?」
「消太でいい」
へっ?
「付き合うんだろ、俺達」
あれ……?
なんか、さっきと違う……口調とか、雰囲気とか……!
このひと、付き合うってなったらいきなり豹変するタイプか!
「あの……どちらへ……?」
何となくこの後の展開が読めてしまって、恐る恐る尋ねると相澤さんは前を向いたまま言った。
「ついてくりゃ分かる」
「……ほぇ……」
今日何度目になるか分からない、マヌケな声を出した私は腕を引っ張られてある所へ連れ込まれた。
ある所って……そう、あれ……
「ラブ、ホ……?」
最後にいつ入ったんだか思い出せない、ラブホ。
え?
もしかして、するの?
え……
ちょっと、待ってよ!
私は、入り口でごねた。
「あの!相澤さん順番おかしいです!まずはほら、デートとか……!これはあの、日を改めて……!」
「いちいちうるせえな」
黙れと言わんばかりにキスされて、私は諦めの境地に至った。
そうだ、このひとアレだった。
順番とかそんなん、気にしなさそうな……うん……そうだった。
「は……」
「……大人しくなったな。行くぞ」
「……ふぇ……」
情けない声を出した私を引っ張って、相澤さんはまるで近所のカフェでも入るかのようにラブホに入っていった。