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The usual one【ヒロアカ中心】

第9章 事情聴取(相澤消太)


 えええ、行っちゃった!

 ……どうしよ……

 ちらりと相澤さんを見上げると、実に澄ました顔で自分のグラスに口を付けていた。

 「あの……」
 
 言葉が上手く出なかった。

 ホントに、このひとが何を考えてるのか分からない。
 急に好きだって言うし、キス、するし……
 嵐っていうか、ゲリラ雷雨だな……もう。

 「ど、どこまで本気なんでしょうか……?」
 相澤さんは、顔色一つ変えずに言った。
 「最初から、全部本気です」
 そして、私から奪ったグラスをテーブルにコンと置いた。
 「何でもいいんで返事、聞かせて下さい」
 「……へっ……」
 また、思わず間抜けな声が出てしまった。

 返事……って言われても……
 相澤さんは違うみたいだけど、私は今日初めて会ったばっかだし?
 何も、相澤さんの事、知らないし?

 ……どうしよ……

 「えと……私、は……うん……そりゃ、あんな事言われたりされたりしたら、気にはなりますよ?けど……それが好きとかに繋がるかどうかは……」
 正直な気持ちを言ってしまっていた。

 これが、私の今の精一杯だと思う。

 気になるけど、好きとは違う。

 「そんな感じ、ですけど……」

 急に照れ臭くなって、テーブルの上に置かれたグラスを手に取ると今度こそそれをぐいっと傾けた。
 「……はっ、それじゃ、答えになんないですか?」
 グラスの中身を飲み干してから、そう聞いた。
 「……いや、」
 相澤さんも、グラスを傾けた。
 ゴクンとお酒を飲みこんだ喉仏が、上下に動く。

 何故だか、見入ってしまった。

 それを見ていたのかいないのか、テーブルの上にグラスを置いた相澤さんが、私の腕を優しく掴んだ。

 「抜けましょう、ここ」
 「へぇっ?」

 腕を引かれて、ついに会場を抜け出してしまった。

 「あ、相澤さんっ」
 キラキラと輝くイルミネーションの大通りを、腕を引っ張られながら通り過ぎる。
 すると、相澤さんが急に立ち止まった。
 「わっ!」
 その勢いで、私は彼の背中にしがみついてしまった。
 「す、すみませ……」 
 「名前」
 「……は……」

 「あなたの名前、教えてください」

 私、名乗らなかったのか……あの時……ちょっと、失礼だった……

 「甘井、繭莉……です……」
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