【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第6章 No One’s Yours
黒尾はスマホを耳に当てたまま、押し殺したような低い声で一方的に話し続けていた。
「……もうこういうの、続けるつもりはない。……悪いけど、これ以上は無理だ。……俺の方から、終わりにする。–––もう、会わない。」
そのとき––––。
スマホから、かすれた声が漏れた。
『……どうせ私が連絡したら……会いに来るでしょう?』
黒尾の足が止まった。
ほんの数秒の沈黙。
黒尾は、まぶたを伏せて夜空を仰ぐ。
「……もう、会わない。」
短く、でも決定的な声だった。
指先がわずかに震える。
そのまま通話を切ると、スマホの画面が暗い夜に沈んでいった。
––––––
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スマホの画面に、新着メッセージの通知が浮かんだ。
差出人はクラスメイト。
添付されていたのはあのとき「いらない」と言った、執事服姿の黒尾の写真だった。
タップした瞬間、画面いっぱいに映し出された黒尾の姿。
きっちりとしたシャツ、黒いベスト、そしてふとした瞬間の真っ直ぐな笑顔。