【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
「でも……その人がいる限り、もう……2度と、今日みたいなことはしないで。」
黒尾の呼吸がわずかに止まる。
その目に、痛みと後悔の色がかすかに滲んだ。
「……こんなことで、友達もやめたくない。だから、それだけは……裏切らないで。」
その言葉は、涙にも怒りにもならない、静かな願いだった。
黒尾は何も言わず、ただ仁美の肩に手を回した。
先ほどの荒さはどこにもなく、まるで壊れものを抱くように、そっとその肩を抱きしめる。
「……分かった。」
黒尾の声は低く、掠れていた。
それでも、その一言には確かな重さがあった。
倉庫を出ると、空気は夜の気配に染まりはじめていた。
2人は多くを語らず、静かに並んで歩く。
黒尾は仁美の歩幅に合わせながら、家の前まで黙って送り届けた。
その間黒尾のスマホがずっと鳴っている事に仁美は気が付いていた。
今度は黒尾はスマホを仁美の前で出す事は無かった。
その黒尾の気遣いさえ–––––。
仁美は冷めた気持ちで彼を見ていた。