【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
「…待ってて欲しい……。俺は仁美が好きなんだ。」
喉の奥でこすれるような声。
まるで自分に言い聞かせるように、震えていた。
「…あの人の事は好きじゃない…自分で分かってる…。だけど無理なんだ。無視できない。気がつくと自分から連絡してる……。」
仁美は黒尾の胸に顔を押しつけられながら、小さく問うた。
「……それって……好きってことじゃないの?」
黒尾の肩がわずかに揺れる。
一拍、長い沈黙が落ちたあと、黒尾は静かに、首を横に振った。
「……違う。好きなんかじゃない。……この気持ちは恋でもない…。」
黒尾の目がゆっくりと伏せられる。
「……気持ち悪いんだ。あれは–––執着だ。俺の……一番汚いとこだ。」
仁美は黒尾の告白を黙って聞いていた。
しかし、それは彼の気持ちを理解しているわけでは無かった。
仁美は静かに息を吐き、まるで分かったフリをするように、ゆっくりと口を開いた。
「……分かった。」
仁美は視線を落としたまま、続ける。