【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
しばらく、黒尾は何も言わずに仁美を抱きしめていた。
荒い息づかいだけが狭い倉庫の中にこもり、彼の心の中にあった激しい衝動が、少しずつ沈んでいく。
やがて、黒尾の腕の力が緩んだ。
体を少し離して、彼は仁美を見下ろした。
乱れた髪。はだけた制服。
その姿を見た黒尾の眉が、わずかに歪む。
自分がしたことの形跡が、仁美の体に残っている。
「…………。」
黒尾は黙ったまま、仁美の服に手を伸ばし、丁寧にボタンを留めていく。
1番上のボタンだけは自分が引きちぎってしまっていた。
その事実に、黒尾の眉間がさらに深く寄る。
彼は無言のまま自分のブレザーを脱ぎ、仁美の肩にふわりと掛けた。
「……立てる?」
黒尾の手が差し出され、仁美はゆっくりと起き上がる。
彼のブレザーが肩から滑り落ちないよう、ぎゅっと抱きしめたその瞬間–––––。
黒尾が再び、仁美を強く抱き寄せた。
黒尾は仁美を抱きしめたまま、低く押し殺した声で言った。