【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第2章 Shifting Distance
だけどその沈黙が、余計に現実をはっきりと刻み込むようだった。
「まあ、バラバラになっても、俺らは俺らだろ。」
黒尾が前を向いたまま、軽い調子で言う。
でも、その声の奥には、確かに“名残惜しさ”があった。
それに気づいたのは、仁美と研磨だけだった。
夕焼け空が完全に夜に変わる前の、ほんの一瞬。
3人は肩を並べて歩いていた。
同じ道を歩ける時間は、もうあまり長くないと知りながら。
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春高終了後–––。
黒尾は12月には推薦入試を受けていたが、仁美は一般入試だ。
今が受験の本番だ。
仁美は研磨の机に広げた参考書のページをめくった。
鉛筆を握る指先が少し汗ばむ。
暖房が効きすぎてるのか、頭の奥はぼんやりしていた。
「疲れた……。」
思わずそう漏らすと、研磨はすでにベッドの上で仰向けになったままスマホをいじっていた。