【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
「クロに好きな人が出来ても、仁美に対する態度が変わらなかったこと。ずっとムカついてた。」
黒尾は何も言えず、ただその言葉を飲み込む。
研磨は続けた。
「でも……たぶん、それってさ、クロ自身が1番よく分かってたんだと思う。仁美以外の誰かを好きになったことに、罪悪感があったんでしょ。」
黒尾の喉が、かすかに鳴る。
否定も肯定もできないまま、ただ息を呑んでいた。
「でもな、クロが誰を好きになろうと、俺にも、仁美にも、本当は関係ないんだよ。……そんな罪悪感抱える方がおかしな感情だよね。」
淡々とした声。
責めるでも、縋るでもない。
ただ、長い時間の中で彼が自分の中に落とし込んだ“結論”だった。
黒尾の胸の奥で何かが静かに崩れる。
研磨の言葉が、怒鳴り声よりも何倍も痛く突き刺ささった。
研磨は黒尾から視線を外さずに、最後に一度だけ短く息を吐いた。
「……じゃあね。」
それだけ言って、背を向ける。
街灯の下、研磨の影がゆっくりと歩き出し、夜の道に溶けていく。
黒尾はその場に残され、言葉を持たないまま、ただ立ち尽くしていた。