【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第2章 Shifting Distance
いつも淡々としている研磨にとって、部活はきっと義務じゃなかった。
でも、それでも彼なりにここまで歩いてきたのだと知っているから、その言葉が胸にしみた。
「研磨らしいね。」
仁美がそう言うと、研磨は少しだけ肩をすくめた。
黒尾がそんな研磨の頭を軽くくしゃっと撫でる。
「お前、ほんとブレねぇな。」
「クロがうるさかったから、ちょっとは頑張ったんだよ。」
「おい、ちょっとはってなんだよ。」
黒尾が笑い、研磨が口元だけでふっと笑った。
3人の間に吹く夏の風は、どこか懐かしい匂いがした。
けれど––––それが最後の“この空気”になることを、仁美はどこかで感じていた。
「でもさ。」
仁美は足元のアスファルトを見つめながら言った。
「すぐに受験だよ。部活終わったら、今度は勉強。」
「うわ、現実的。」
黒尾が顔をしかめる。
「せっかく終わったのにさぁ……もうちょい余韻に浸らせろよ。」
「現実逃避しても、大学決まらないよ、クロ。」
「俺、推薦取ってるから。」
「ズルッ…。」