【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
それでも、食卓の空気は不思議とぎこちしくなかった。
笑って、食べて、ふざけて。
まるで、空白の3年間が丸ごと薄紙になって剥がされているみたいだった。
研磨はまるで、戻ってきた二人を見るのが嬉しいようでもあり、胸の奥が疼くようでもあり。
それでも彼は何も言わない。
ただ、食卓に笑顔があることだけを受け止めるように、静かに三人で過ごす時間を見つめていた。
先に潰れたのは 仁美 だった。
テーブルに突っ伏すようにして眠ってしまった 仁美 の頬がほんのり赤く染まっているのを見て、黒尾はゆっくりと手を伸ばした。
指先が 仁美 の頬に触れた瞬間、ずっと張り詰めていた何かが緩んだように、黒尾の喉から微かな息が漏れる。
「……仁美。」
呼び方はまるで祈りのようだった。
そして黒尾は、堪えきれずに 仁美 の頬へ、唇を寄せる。
触れるだけのキスじゃ足りない。
そのまま、頬からこめかみ、髪へ、眉の際へ、何度も、何度もキスを落とす。