【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
「ちょっ……そんなに入れないでよ……!」
「いーじゃん、明日は休みなんだから。」
笑いながら、黒尾は仁美の肩に手を回しかけ──研磨の視線に気づくと、そっと引っ込めた。
研磨はいつも通りの無表情で缶コーヒーを持ち上げた。
「……酔いすぎて倒れられても面倒だからね。ほどほどにね。」
そう言いつつ、ほんの少しだけ眉が緩んでいた。
黒尾は「研磨は相変わらずシラフだなぁ」と軽くつつく。
研磨はそれにも淡々と、
「誰かがシラフじゃないと、明日この家、ひっくり返ってるでしょ。」
研磨はいつものように、ほとんど表情を変えずに二人の騒がしさを見ていた。
一見楽しそうに飲んでいる三人。
──けれど。
三人がバラバラになった“あの日々”の話題だけは、誰一人として触れようとしなかった。
黒尾も、仁美も、その存在を一瞬だけ感じるように黙り込み、
すぐに違う話題へ切り替える。
“話さない”という選択を、三人とも無意識にしていた。