【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
「……クロ。」
黒尾は返事にならない声を漏らしながら、袖で目元を乱暴に拭った。
研磨はその様子を見て、小さく肩をすくめたあと、淡々と、しかしどこか確信めいた声で言った。
「──仁美 は、絶対に俺たちのところに戻ってくるよ。」
黒尾はその言葉だけで、泣き腫らした目をゆっくり上げて研磨を見る。
研磨は相変わらず落ち着いている。
だけど、その口元には薄く笑みが浮かんでいた。
「戻ってきたとき……クロが必要なんだ。」
黒尾は息を飲む。
研磨の瞳は、黒尾よりもずっと深い場所にあった。
あの頃と変わらず…いや、もっと静かで、もっと手強くなっている。
黒尾は息を震わせながら、研磨の言葉を胸の奥で噛みしめた。
その日、黒尾は初めて知った。
──研磨もまた、仁美 を手放す気など一度もなかったことを。
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リビングの片付けを一人で進めながら、研磨はふと手を止めた。