【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
──あの頃。
仁美 が黒尾と別れても、自分からは離れないと信じていた。
黒尾との関係が壊れても、仁美は研磨のところには来る。
そんな確信めいた感覚さえ持っていた。
だけど現実は違った。
仁美 が選んだのは、研磨との別れでもあった。
静かに距離を置いて、そのまま本当に離れてしまった。
研磨はその時、痛いほど悟った。
──自分だけでは足りなかった。
仁美を側に置いておくには、自分では埋められない部分がある。
その欠落を埋めていたのは、間違いなく黒尾だった。
黒尾がいて、三人だったから仁美は自分のそばに自然といてくれた。
一人でリビングの段ボールを潰しながら、研磨は小さく息を吐く。
そしてぽつりと呟いた。
「……クロ、ちゃんとしてよね。」
その言葉には三年分の焦れと執着と、わずかな祈りが滲んでいた。
仁美が戻ってくる未来のために。
三人でなければ繋がらない縁をもう一度紡ぐために。
研磨はゆっくりと段ボールを重ね、立ち上がった。