【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
「あ、笑った。」
「……笑うでしょ。」
「うん。やっぱ 仁美 は、こうして笑ってる方がいいな。」
黒尾の言葉は今までのような執着の匂いではなく、ただ素直に嬉しいだけが滲む優しい声音だった。
スーパーに入ると、二人は歩調を合わせてゆっくりと進んだ。
「お惣菜でいいよね?」
黒尾は昔と変わらない調子で言いながら、コロッケの棚を覗き込む。
仁美 も隣に並び、「うん。作るもの何もないしね」と笑って返す。
笑った瞬間、黒尾も笑う。
あまりに自然すぎて、3年の断絶がほんの一瞬ふわっとまた薄れる。
飲み物コーナーに移ると、黒尾が何気なく缶を取った。
「え、お酒飲むようになったの?」
黒尾は缶を指でくるくる回しながら、「普通に飲むよー。大人なんで」と言って小さく笑う。
その言い方がどこか誇らしげで、仁美 の知らない時間の積み重ねがそこにあった。
「仁美 は?飲まないの?」
「……あんまり強くないし。」
「今日は飲めば? 俺の家じゃないけど、研磨んちだし。」