【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
その“変わらなさ”が、仁美の心の緊張をゆっくりとほぐしていく。
「買い物ついでに、ゴミも捨ててきてって研磨に言われたんだよね。」
黒尾は当たり前のように玄関の鍵をポケットに入れ、ゴミ袋を片手に歩き出す。
迷う素振りもなくスッと住宅街の道を進んでいく黒尾に、仁美はふと違和感を覚えた。
「……クロ、ここ来たことあった?」
「あるよ? 研磨が引っ越す前から内覧ついて行ってさ。周りのスーパーとか駅とかも、一緒にリサーチしたんだよね~。」
あまりにも自然に言うものだから、仁美は一瞬言葉を失った。
──自分が知らない間に、二人はちゃんと会っていたんだ。
その事実に少し胸を痛めたが、良かったと嬉しさもあった。
黒尾がこちらを振り返って笑う。
あの、昔と同じ無邪気で明るい笑顔。
「……そっか。仲良いままなんだね。」
「当たり前じゃん? 俺と研磨だよ?」
その言い方があまりにも自然で、あまりにも懐かしくて仁美は、自分でも気づかないうちに表情が緩んでいた。