【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
黒尾はリビングに入ってくると、当然のように荷ほどきの輪に入ってくる。
「これどこ置くやつ? あ、研磨、それゴミ袋?」
彼が参加しただけで、静かだった作業が一気に明るく、騒がしくなった。
黒尾の声がけに、研磨が淡々と返事をする、その表情も懐かしい。
段ボールを開ける音、黒尾の軽口、研磨の淡い返し。
そのすべてが、三人の時間をゆっくりと過去へ巻き戻していく。
──まるで、本当に昔に戻ったみたいだった。
仁美は胸の奥に、懐かしさと、ほんの少しの痛みを抱えたまま、黙って段ボールに手を伸ばした。
気がつくと、午後から始めた荷解きは、いつの間にか窓の外が橙色に染まる時間になっていた。
「……もう、こんな時間なんだ。」
ぽつりと漏らした 仁美 の声に、黒尾が振り返る。
「リビングはひとまず片付いたしさ。……夕飯、どうする?」
黒尾が軽い調子で言うと、仁美 は苦笑して頭を振った。
「今日はもう帰るよ。迷惑かけちゃうし。」
「明日も休みなんだし……一緒に食べれば?」