【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
二人はそのまま再び手を動かし始める。
無言だけど、ぎこちなさよりやっと戻ってきた時間の柔らかさのほうが勝っていた。
段ボールの中からコードの束を取り出しながら、研磨が言った。
「……で、どうなの?……彼氏とは、仲良くやってるの?」
仁美 の手が、そこでピタリと止まった。
ほんの一瞬止まった手、研磨はその一瞬を見逃さない。
仁美 は、ゆっくりと視線を落としてから、短く答えた。
「……うん。まぁ……普通に、ね。」
研磨は段ボールの縁に視線を落とし、コードを整えながら言う。
「そっか。」
研磨は新品のカッターを手に、無造作にテープを切っている。
その横で、仁美も同じように段ボールを開け、ひとつひとつ確かめながら荷物を並べていた。
研磨が姿勢を変えるたび、パーカーの布が擦れる音だけが微かに響く。
その沈黙を破ったのは、インターフォンの高い電子音だった。
ピンポーン。