【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
ふと、仁美 が机の上の段ボールに目を向ける。
「これ全部、研磨一人で開けるの?」
「……そのつもりだったけど。」
研磨は 仁美 の顔をじっと見た。
まるで“言っていいのか迷っているように。
「……手伝ってくれるの?」
その声は昔と違って、どこか臆病で、どこか期待していて。
仁美 は頷いた。
「うん。せっかく来たんだし」
その返事に、研磨の表情がほんの少しだけほころんだ。
二人は黙って段ボールの口をテープから剥がし、同じリズムで荷解きを進めていた。
紙のこすれる音だけが、少し広い一軒家の空気に溶けていく。
その沈黙の中で、研磨がふっと息を吸った。
「……ほんとに、久しぶりだよね。」
柔らかく、けれど胸の底を撫でるような声だった。
仁美 は手を止め、少しだけ研磨の方を振り返る。
懐かしさが胸に広がる。
「……うん。直接会ったのは……研磨の春高以来だね。」
言葉を区切るたびに、段ボールの中の空気さえ揺れそうだった。