【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第13章 Beyond the Broken Line
玄関を上がり、靴をそろえて一歩踏み込むと、家の中はまだ生活の匂いが根付いていなかった。
段ボールの山、未開封のまま積まれた機材、むき出しのLANケーブル。
研磨が選んだ静かな住宅街の一軒家は、引っ越してきたばかりの空白をそのまま抱えている。
「……ほんとに、引っ越したばっかりなんだね。」
仁美 が呟くと、研磨は少し気まずそうに頬をかいた。
「うん……まだ、片付けてない。ていうか、片付け方がわかんないだよね。」
その言い方が昔と全く変わらなくて、仁美 はほっと息を漏らした。
研磨はその様子を見て、まるで胸の奥をそっと撫でられたような表情をした。
「……上がって。リビング……ってほど整ってないけど。」
案内された先は、唯一スペースが開けられた大きな机と、椅子が二つ。
段ボールの隙間には、研磨がいつも使っていたゲーミングPCとモニターが並んでいた。
懐かしさと距離感が入り混じった空気の中、仁美 は椅子の縁にそっと腰をおろした。