【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第12章 Triangular Midnight
ただ、黒尾が崩壊していくのを止めようともせずに見届けているような、静かな眼差をしていた。
その静けさを破るように、研磨の家の玄関のドアが開く音がした。
ゆっくりと外に出てきたのは仁美だった。
黒尾の身体がビクリと動いて、反射のように走り出す。
ふらついた足取りのまま、それでも必死で仁美へ向かっていく。
「仁美……!」
声が震え、喉がつまって言葉がうまく出ない。
けれど仁美は、一歩だけ後ろへ下がった。
黒尾の手が空を掴んだ。
その小さな拒絶だけで、黒尾の顔から血の気が引いた。
仁美は涙の跡を残したまま、黒尾の目を真っ直ぐに見た。
震えていたのは唇だけで、声は驚くほど静かだった。
「……クロとは、別れる。」
その言葉が落ちる瞬間、黒尾の表情が完全に「絶望」という形になった。
そこまで聞いた研磨は、何も言わなかった。
ただ横目で黒尾の壊れていく様を確認しながら、その横に立つ仁美から目を離さなかった。
仁美は、視線を逸らさなかった。
──この瞬間が、三人の終わりの始まりだった。