【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第12章 Triangular Midnight
黒尾病院を出ては走り出していた。
まどかを振り返らずに、彼女も黒尾を呼び止めることはしなかった。
黒尾は自分の決断がどれほど酷いものか、理解しているのに足は止まらない。
息が荒くなって、胸が痛い。
まともに呼吸ができなかった。
ホテルのドアを開け放った瞬間、黒尾の息が止まった。
静まり返った部屋。
整ったベッド。
そしてテーブルの上に置き去りにされた、二人で買ったケーキの箱だけがぽつんと残されていた。
黒尾の手から、スマホが落ちそうになる。
喉の奥が冷たく震えた。
「……研磨……。」
その名前だけが、呪いのように口から零れた。
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黒尾の目は虚ろで、何かを必死に探しているのに、焦点がどこにも合っていなかった。
指先が震えているのも、本人は気付いていない。
研磨は壁にもたれたまま、そんな黒尾を冷静に見ていた。
責めることも慰めることもしない。