【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第12章 Triangular Midnight
そう思った瞬間、胸の奥がドクン、と跳ねた。
心臓の鼓動が、うるさい。
耳の奥で脈打つ音が響いて、自分の体のものとは思えないほど乱れている。
頭では「大丈夫」「すぐ戻れば間に合う」と繰り返しているのに、脳裏に焼き付いているのは、あのホテルで見た泣きそうな 仁美 の横顔だった。
──なんで、あんな顔させた。
胸の奥がズキッと痛む。
罪悪感と焦燥が絡み合って呼吸が乱れる。
落ち着け、と言い聞かせても、まったく効かない。
仁美の泣いている顔が頭を占める、もう一人の影が頭をよぎった。
研磨。
ずっと隣で 仁美 を見ていた顔。
泣いている 仁美 を、迷わず抱きしめるであろう腕。
黒尾は息を呑んだ。
喉奥がキュッと締まる。
何かがこみ上げるようにして、胸を掴まれたように苦しい。
このままここにいたら、仁美 を失う。
その確信が、理屈もなく黒尾の背中を押した。