【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第12章 Triangular Midnight
まだ、黒尾の心のどこかに自分が残っている──
そんな“慰め”にも似た支配の匂いが、まどかの声には混じっていた。
黒尾はそこでようやく、はっきりとまどかの顔を見る。
まどかは笑っていた。
「愛してほしくて、色々試しちゃうんでしょ?相手を傷つけて、泣かせて……縋られることでしか、自分の気持ちを確かめられないんでしょ?」
その言葉の一つひとつが、胸に鋭く刺さる。
「可哀想に──あの子はね、そんなあなたを愛してくれないのに。」
黒尾の喉がひくりと鳴った。
息が詰まるような、不気味な不安が一気に押し寄せる。
仁美が、自分を泣きながら待っているはずだ。
その涙を全部拭ってやり、震える身体ごと抱き寄せて、息も心も、何もかも全て自分のモノにする。
──その完璧な「確信」が。
まどかの言葉ひとつで、ぐらりと崩れかけた。
黒尾は、震える指でスマホを握りしめたまま、病院の白い壁を背に立ち尽くしていた。
──仁美 が待ってる。