【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第12章 Triangular Midnight
震える声で呼んだ自分の名前。
腕を掴んで離さなかった細い指。
頬に触れようとして、迷って、また掴み直した熱。
思い出すだけで、黒尾の胸はじんと熱く満たされていく。
それが黒尾には、かつてのどんな高揚よりも強く刺さっていた。
──あぁ、俺は仁美に愛されてる。
その確信の甘さが、表情の全てに滲み出てしまっていた。
まどかは黒尾のその顔を見て悟る。
「……そういうこと、ね。」
視線が冷えて唇を噛みしめ、悔しさを飲み込むようにして目を伏せた。
黒尾はそれでも視線を向けない。
まどかはそんな黒尾を見て、ゆっくりと顔を歪ませた。
「……可哀想。」
まどかの言葉に黒尾は一瞬だけ目を伏せる。
「鉄朗くんも──こっち側に来ちゃったんだね。」
まどかはベッドの上で、包帯の巻かれた腕を撫でながら続ける。
「私がそんな愛し方しかしてあげられなかったから……あなたも、そうなっちゃったんだね。」