【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第12章 Triangular Midnight
黒尾は震える足取りのまま、研磨の部屋へ入ってきた。
研磨は立ち上がり、黒尾のためにそっと道を開ける。
その直後、階段のあたりから別の足音が近付いてくるのが聞こえ、研磨は一度部屋を出て扉を閉めた。
ドアの前で、研磨の母親が不安そうに「何があったの」と問いかける。
研磨は短く「大丈夫」とだけ告げ、母親が階下へ戻っていくのを確認する。
再び静けさが戻ると、研磨は部屋に入りなおした。
そこで目にしたのはベッドの下に崩れ落ちるように座り込み、背を向けたままの 仁美 に、首を垂れて何度も名前を呼び続ける黒尾の姿だった。
掠れた声。震える肩。
その声で、黒尾が泣いていることがはっきり分かった。
研磨は腕を組み、壁にもたれたまま黙ってその光景を見ていた。
ベッドの下に座り込んだ黒尾は、背を向けたまま震えていた仁美 の肩に触れられず、ただ名前を呼び続けていた。
声は掠れ、泣き声が混じり、言葉は途切れ途切れになる。
「……なんで……研磨と……すぐ戻るって……言ったのに……。」