【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第12章 Triangular Midnight
駅前のロータリーは、卒業式の余韻をまだほんの少しだけ残している。
制服姿のまま、ゆっくり歩く人々の列。その中で、夜道にぽつんと立ち止まる影があった。
研磨は、部活終わりの疲れを引きずりながら、イヤホンを外してふと顔を上げた。
──そこに、仁美 がいた。
街灯の下、涙の跡を乾かす暇もなく、ただ宙を見つめて立ち尽くしている。
その姿に、研磨は心臓を掴まれたように足を止めた。
「……仁美?」
呼びかけると、仁美 はゆっくり振り向いた。
その瞬間──研磨はすべてを悟った。
泣き腫らした目。震える唇。無理に作る笑顔さえ無い。
黒尾と一緒にいるはずの彼女が、こんな顔で一人でいる理由なんて一つしかない。
仁美 は研磨を見るなり、堰を切ったように涙をこぼした。
「……クロが……あの人のところに……行っちゃった……。」
震える声に、研磨は一言も返せなかった。
返せないまま、彼は迷わず 仁美 の腕を取り、自分の家まで連れて行った。