【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第11章 The Night I Chose You
黒尾は自分の感情をよく知っていた。
隣で歩いていれば揺れる手を意識的に掴みたい気持ち。
振り向いた仁美が笑えば、自分の同じ顔になる感情。
なにも無くても勝手に追ってしまう視線。
仁美が隣に居るだけで幸せになれるその感情を。
黒尾は愛だと分かっていた。
「あなたとは……最初から、寄り添うべきじゃなかった。」
まどか の表情が固まる。
「鉄朗くん……?」
「俺の隣にいるべきだったのは、あなただじゃない。もちろんあなたの隣も俺じゃない。」
ゆっくりと、それでもハッキリとした決別の言葉だった。
まどか の瞳が怒りとも悲しみともつかない色で揺れるが、
黒尾はもうその顔を見なかった。
ただ、仁美 の手を包み込みながら言う。
「…もう行こう。」
黒尾は仁美の手を引くと、まどかに背を向けた。
それから2人で歩き出す。
黒尾は振り返らなかった。
真っ直ぐ前を見て歩く黒尾の横顔を、仁美は静かに見上げた。