【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第1章 Prologue
川の水面がオレンジ色に染まっていた。
沈みかけた陽の光が橋の裏側に反射して、淡い金色の揺らぎが広がる。
夏の終わりの空気は少し湿っていて、風が頬を撫でていった。
「……ねえ、あれ見て。」
仁美が指差した先に、黒い子猫がうずくまっていた。
小さな身体をぎゅっと丸めて、夕焼けの光を受けた瞳だけがきらりと光っている。
「かわいい……。」
仁美がしゃがみ込んで、そっと手を伸ばそうとしたその瞬間。
隣から静かな声が落ちた。
「野良猫、触っちゃダメだよ。」
研磨の声は淡々としていたけれど、なぜかまっすぐ心に残った。
仁美の手が止まり、少しだけ肩が下がる。
小さく息を吐いたその横顔は、夕焼けに包まれてまるで切り取られた一枚の絵のようだった。
「そっか……。」
仁美は再び子猫に目を戻す。
その背中は小さくて、柔らかいのに、不思議と強い印象を残した。
黒尾はその少し後ろに立ち、仁美の姿をじっと見ていた。