【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第2章 Shifting Distance
「無理するなって。」
ひょい、と自然な動きでパネルの端を持ち上げる。
その瞬間、仁美の肩にかかっていた重みがふっと軽くなった。
「うわ、ありがと……。」
仁美の安堵した声に、研磨は小さく肩をすくめた。
「そもそも、これ一人で持つもんじゃないでしょ。」
「……でも、ちょっと頑張れるかなって思ったんだもん。」
「バカ。」
ぽつりと落とされたその言葉は、責めるようでもなく、照れくさいようでもあった。
彼の声に、仁美は一瞬だけ目を丸くして、すぐに笑った。
「ありがと、研磨。」
パネルを二人で持ちながら歩く廊下は、放課後の陽が差し込んでオレンジ色に染まっている。
研磨はパネルを運んだ後、教室の中でパネルに彩りを整える仁美に聞いた。
「……執事喫茶?」
看板に描かれた文字を見上げながら、研磨がぽつりと呟いた。
カラフルなペンキで「Welcome!」と描かれたボードの下には、きっちりと黒いスーツ姿のシルエット––––まるで英国執事のようなイラストが並んでいる。