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【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】

第9章 Cling to Me, Even If it Hurts







研磨の部屋。

ゲーム機のコードが床を這い、机には参考書とヘッドホン。

その奥にあるベッドは、彼が一番眠って、一番考えて、一番現実から逃げた場所。




そのベッドの縁に、 仁美 が座らされて、黒尾は床から 仁美 を見上げる。





「……試験、お疲れ。」

黒尾の声はやわらかいのに、部屋はじわりと狭く感じる。

「ありがとう……。」




その言葉だけで、仁美 の胸の奥がひやりとした。




ここは研磨の家で、研磨の部屋だ。

でも黒尾はここにいる。

先に、場所を取っている。




「……初めから研磨の家に来る予定だったの?」

「……うん。」




黒尾に笑顔はなかったが、怒りも見せない。

ただ、ゆっくりと距離を詰める。




ベッドが沈む。

背中に壁、足元に机。逃げ場がひとつずつ消える。





「でも来たのは俺だったね。」

指先が、仁美 の手を捕まえた。

冷たいわけではないのに、その温度が囚われる感覚を呼ぶ。





黒尾はベッドの端に座る 仁美 の手を、指の一本一本まで絡め取った。
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