【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
仁美 は、ひとり息を吐いて研磨の家の前に立つ。
インターフォンに手を伸ばしたとき。
「……仁美。」
背後から声が落ちてきた。
瞬間仁美の心臓が跳ねる。
振り返ると、黒尾が立っていた。
彼は笑っていていつもの調子のはずなのに、その目が、どこか乾いていた。
「やっぱり……研磨に会いに来たんだ。」
仁美 の喉が鳴る。
返事できないまま瞬きをする。
(なんで……ここに?)
「俺が呼ばれたと思ってた?」
黒尾がゆっくり近づく。足音がやけに響く。
仁美 は無言で首を横に振る。
次の瞬間、黒尾は柔らかく笑い、その笑顔のまま、仁美 の手を掴んだ。
冷たい指先で強い力だった。
「行こ。研磨の家なんだし。」
そのまま引かれて、インターフォンが押される。
「はーい。」
出てきたのは研磨の父。
いつも通り、優しい笑顔だ。
「おお、鉄朗くんに 仁美ちゃん。研磨待ちかい?」
「うん。研磨が部活終わるまで、部屋で待つって約束。」