【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
チャイムが鳴る。
問題用紙を裏返す音が一斉に響き、空気が張り詰める。
仁美は目の前の問題に視線を落とし、静かに、答えを書き込んでいく。
––
––––
終わりを告げるチャイム。
鉛筆を置いた瞬間、心臓が一度、重く跳ねた。
外に出ると、冬の空気が肺を刺す。
仁美は小さく息を吐き、スマホを取り出して画面を点けた。
通知——二件。
クロ《終わった?どこ?》《会いたい》
時間、10分前。
すぐ、続くもう一件。
研磨《おつかれ、うち行って、部活終わるまで待ってて》
文章は短いのに、指先が止まる。
どちらの名前も、胸を締め付けた。
でも——
仁美の親指が動く。
黒尾の通知はスライドせず。開かず。触れない。
震える手で、研磨のチャットを開き、打つ。
《行くね》
送信。
青い既読マークがつく前に、スマホを胸に押し当てて目を閉じた。
はぁ、と息が漏れる。
まるで、選んだ瞬間に、心臓がほんの少し傾いたみたいだった。